1999

最後のカード

 アメリカ合衆国大統領官邸、通称ホワイトハウス。今ここでは、全面核戦争寸前の極めて高度な政治的駆け引きが行なわれていた。大統領の一挙手一投足を、全世界が固唾を飲んで見守っていた。
「だ、大統領!」
「どうした、軍事担当補佐官」
「ついにソビエトが最後のカードを使ってきました!」
「な、何ぃっ! ・・・最後のカード、それは極東に配備したオハイオ級潜水艦艦隊を撤退させなければ、地上発射弾道ミサイルすなわちICBMを西海岸にぶちこむというあれか?」
「既に第七、第八艦隊は全力で西進、ペルシャ湾からも空母ジョン‐F‐ケネディが当該海域に向かいました!」
「うーむ、このハードな内容に読者はついてきているのか?」
「だ、大丈夫だと思いますが、大統領」
「少年誌でやったほうがいいんじゃなかったのか?」
「ええからはよせえや!」
「うむ、よし。で、我が潜水艦艦隊の現在位置は?」
「アリューシャン列島の南方海上、北緯四十二度線沿いに西進中です」
「確か、ペトロハバロフスクには、ソビエト最新鋭の潜水艦艦隊があったな」
「はい、例のレッドオクトーバーです」
「ならば、オハイオ級潜水艦に搭載してある、潜水艦発射弾道ミサイル言うなればSLBMは警戒されている、か・・・」
「どうします、大統領」
「・・・極東の潜水艦艦隊はそのまま西進、SLBM発射用意」
「しょ、正気ですか! 大統領!」
「聞こえなかったのか、承服しろ」
「で、できませんっ! そんなことをすれば、ソビエトのICBMつまるところ大陸間弾道ミサイルで西海岸は消滅します!」
「大丈夫だ、案ずるな。向こうが最後のカードを使ってきたのなら、こちらも最後のカードを使うしかない」
「だ、大統領、まさか・・・」
「ペンタゴンとNORADに連絡、NMDミッションをスタートさせろ」
「NMD、全米ミサイル防衛システムですね!」
「相手がどれだけICBMっちゅうかインターコンチネンタルバリスティックミサイルを撃ってこようと、このNMDが大気圏外で迎撃するのだ。ただちに相手国に降伏を勧告しろ。最後通牒だとな」
「イエスサー!」
 そのころ、ソビエト共産党本部では・・・
「え、マジ? うわあ、やられたなあ」
 世界地図のボード上で、書記長は最後のカードを裏返してサイコロを振った。
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